痴呆症ネットワーク
職員の教育研修は不可欠ですが、多くの場合、それだけでは不充分です。職員が仕事のやり方を変えようとしても
実行が難しくせっかく研修で学んだことも実現されない場合があります。DADはこの問題を克服するために痴呆症
ネットワークを開設しました。このネットワークは、痴呆症ケアの優れた手法を持ち、現実の世界で実践に移すため
のツールとなっています。
痴呆症高齢者のための環境原則
1 小規模
歩行可能であるが混乱または精神的に動揺した老人を介護するにあたり、8人のグループが十分に小規模であることが
判明している。
2 住み慣れた地域に近い
1ケ所に集められた大規模な総合施設は郊外など地域から離れた場所に建てられる場合が多いため入居者とその家族
の間に地理的、社会的な距離を置き、地域社会の活動に参加する機会を妨げてしまう。地域社会に近い小規模な施設で
ケアを提供すれば、入居後も社会的ネットワークが継続されやすい。
3 家庭的
入居者は、医学モデルの一環として治療を受けるのではなく、生活するためにそこに住んでいることを認識し、なる
べく家庭的な環境を作る。台所、ランドリー、風呂場等、普通の家庭にある設備はすべて提供するべきであり、普通の
日常生活に必要な用事はできるだけ入居者にまかせる。料理、洗濯、掃除などこは入居者に参加してもらう。
4 刺激を抑える
痴呆症者にとって多くの刺激に耐えることは難しい。施設は入所者にとって不要な刺激を減らすように設計しなけれ
ばならない。例えば、配達用出入口や職員通路などは入居者の目につかないようにし、処置室、掃除用具置き場、倉庫
に続くドアやコンセントは周囲に溶け込むようにして目立たせない。また職員だけが使うべき制御装置なども目立たせ
ないようにする。このアプローチは刺激を減らすと同時に、入居者が困難な状況に陥ることを回避するものである。
5 必要な、大事な刺激は強調する
トイレのドア、ベッドルームのドアを識別するためのデザイン、照明用スイッチなど、入居者にとって大事な刺激は強調する。
6 全体が見渡せる
混乱した高齢者をケアする場合、シンプルな環境でケアすることによって混乱を減らすことができる。最もシンプルな環境とは入居者がいる位置から行きたい所がすべて見渡せる環境である。この原則を適用すれば建物の設計に長い廊下を限定でき、入居者はほとんど常にスタッフの視野に入っていることになる。この結果、スタッフと入居者両者の不安感を減らすことができる。
7 見慣れた内装―親しみやすさ
痴呆者が近い過去により、遠い過去をよく覚えている、広く知られている。ということは、最近の家具のデザインやインテリアは、入居者の若い頃に好んでいたものと比べて、現在の精神状態と一致しないことになる。周囲の環境を精神状態にマッチさせるには、インテリアは入居者が若かった頃に慣れ親しんだものにするべきである。
8 計画された徘徊路
徘徊は痴呆症者の行動的特徴となることもある。建物を設計するに当たり、徘徊を促すものであってはならないが、安全に徘徊できるようにするべきである。